| (1) 大学院での講義内容 |
大学院での授業は、臨床心理学、発達心理学、心理査定、面接基礎実習など多岐にわたります。これらに加えて、私の院は教育色も強いので教育関係の授業もあります。
講義科目は大学院によってさまざまですが指定校なら臨床心理士の必要単位に合わせて授業が組まれています。
講義内容は先生によって大きく違いますし、昼間と夜とではさらに違いがあります。
夜は社会人が多いためか、どちらかというと基礎的な内容を講義するといった形でしょうか。でも、全般的には、講義形式よりは、対話をしながら考えを深めていくディスカッション形式の授業が主といってよいと思います。
ですから基礎的なことは自分で勉強するというのが前提です。
そういった意味では、皆さんも今受験勉強をしていると思いますが、今やっている勉強がそのまま大学院に入っても活かせると思います。ですから、受験勉強を辛いと思わずに、今の勉強を大切にしてください。
通常の授業のほかに、臨床心理士の1種指定大学院では、必ず実習の授業があります。
うちでも2年生から始まりますが、1年生はまず学生同士でロールプレイなどを行っています。さすがに、いきなり実習は無理ですから。
臨床心理士になるために指定されている単位数は多く、修了単位の倍(60単位)くらいが必要です。
特に1年生のときは科目数が多く大変です。2年生になると実習が入るので、授業時間数は少なくなりますが、忙しいです。
でも、自分の勉強のためにできるだけたくさん授業をとっています。
授業が入っていない時間帯はレポート作成かアルバイトです。
レポートは毎週20枚の授業と10枚の授業と数枚の授業があるから……35枚前後ですね!
毎週35枚前後レポート書かなければいけません。なので週に2日は徹夜してます。週に最低5冊は専門書を読まなければいけませんしね。
それから、夜間の授業もとっているので、一日のうち授業は昼にも夜にもあることになります。
夕方授業が終わったら急いでおにぎりだけ食べて、そのまま、また夜の授業へ、という感じです。
土日には集中講義や勉強会があります。だから、月によっては休みが全然ないこともあり、とても忙しいです。授業がなくても修士論文の準備や資料集めなどがありますし。体力勝負ですね。 |
| (2)実習 |
まず学内実習は、学内にある相談所で先生の指導の下に行います。
学校の相談所は子どもの相談が多いのではないでしょうか。
だから、子どもに対するプレイセラピーが多いですね。指導する先生によってやり方がいろいろなので、指導してもらう先生を選ぶことは大事です。
学外実習は、病院やデイケアのクリニックでの実習です。
1年間、週1回、丸1日をそこで過ごすわけです。実習内容は、病院などの事情によって多少違います。インテーク面接をさせてもらえるところもあれば、見学が主のところもあるようです。
ところで、病院で統合失調症の患者さんと接することは重要だと思います。
ちまたに溢れている心理療法のイメージは、ロジャースやフロイト流の面接をイメージするため、統合失調症に対する心理療法は、一般的なイメージにないかもしれません。
しかし、実際カウンセリングルームや相談所にどのような患者さんが来るかわかりませんので、病院でなくても統合失調症の患者さんと接する機会は当然あると思います。
みなさんが統合失調症の患者さんに対して心理療法を行うかどうかは別としても、患者さんがこられたときに少なくとも適切な機関に紹介するためにも、確りとしたアセスメントをできるようにしておかなければいけませんから。
実習以外では、先生から個人的に指導をうけることがあります。
先生方は、多くの学会に所属していますし、他大学の知り合いも多いなど、情報量が非常に多いので、できる限り接して多くのものを吸収したほうがよいと思います。 |
| (3)研究 |
研究と臨床の両方やるのはとても大変です。
特に社会人だと統計が高いハードルに……。本を読んで理解しても、SPSSなどを実際に動かすのは難しいですね。自分も今苦しんでいます。
大学院は基本的に研究の場であるので、研究は大事です。研究をしているからこそ臨床も活きてくるのだと実感します。
臨床活動をしていく際、研究をおろそかにすると、目の前の現象だけに目を奪われて、客観的な見方ができなくなって知識が偏ってきます。そうすると、良い臨床家にもなれないと思います。
皆さんも入試の時に研究計画書を提出すると思いますが、修士論文はあのテーマから変わってもいいわけです。大学院の先生も、入試の時の研究テーマがそのまま修士論文になるなんて思っていません。
大切なのは、どれだけしっかり研究手法を押さえられているか、先行研究は調べられているか、全体が論理的にまとまっているか、タイトルから研究内容が明確にわかるか、など、あくまで大学院で研究していく上での基礎的な能力が試されているのです。なので、研究計画も臨床と関連していることを認識して作成して下さい。
因みに、研究計画書については、書かれた内容が実際に研究できるかどうかも重要ですね。どう見ても被験者が集まりそうもない研究計画を作ってしまう人も多々いるようですから。 |
| (4)経済 |
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次に経済的な問題ですが、大学院(修士)に納めるお金は、国立で半期26万円、年間で50万円ちょっとといったところです。
もちろん私立だと施設費等々でもっと高いです。実家から通うのであればいいのですが、自分は1人暮らしなのできついですね。家賃とかがあると……(苦笑)。
でも、院生は奨学金を受け取るハードルは低めと聞きました。
周りでも、育英会に申請した人は大体通っていますし、家が裕福な人でも奨学金をもらっています。育英会の1種で月額8万7千円で、2種だと最高13万円(金額か4段階くらいに設定されている)だったかな?。
それから、学校や先生の紹介でアルバイトができることもあります。
相談室の手伝いとか。他には、家庭教師とか子どもたちの世話をするようなバイトを紹介してもらえることもあります。
ただ、大学院生活は忙しいので、アルバイトのできる時間は限られますが。私自身は、研究だけだと気分も塞ぎますし、生活のこともあるので、なんとかやっています。
アルバイトも、臨床関係のことをやれば、勉強させてもらいながらお金ももらえるという、一石二鳥になります。知り合いには、デイケアでバイトしている人もいます。
バイトを全くやっていない人もいます。研究に集中するのも良いですし、バイトやボランティアでいろいろな経験を積むのも良い。その人の事情に合わせていけばいいと思います。 |
| (5)臨床の実際 |
臨床心理学のイメージとして、どのようなものをお持ちですか?
臨床心理学イコール心理療法だと思うかもしれません。それは、ご存知のとおり今までの日本の臨床心理学は精神療法の輸入だったからだと思います。
しかし、海外では、心理療法イコール臨床心理学とはなっていません。様々な症状のデータや治療方法、また基礎心理の研究成果を全部含めて体系づけられています。
これは日本にはないことです。心理臨床も、もちろん臨床心理学の一部ではありますが、それには基礎研究など土台がきちんとあるということですね。そのあたりは、欧米では異常心理学と呼ばれています。
なので、日本もこれからは、事例だけを紹介するのではなく、きちんと臨床のデータや基礎研究をつなぎあわせて、科学的なデータに基づいた「日本の臨床心理学」という枠組みを作っていく必要があると思います。
少なくとも臨床の場面では、これからは、きちんとアセスメントを行っていかなければならないと思います。
アセスメントをしっかり行うということは、心理療法の効果を科学的に検証するということにもつながりますから。つまり、エビデンス・ベイスド(evidence based)ということですね。
精神科医との関わりも大切でしょう。医師は症状を横断的にていきますが、臨床心理士は、生育暦などから患者を発達的にとらえることができます。
そこは臨床心理士の大切な役割でしょう。また、バイオ、サイコロジー、ソーシャル、の3点で患者を理解することが言われていますが、子どもなどにおいて、学校、社会、家庭などさまざまなつながりを見渡せるのは臨床心理士であり、そこも大切な役割でしょう。
今後、いろいろな面で、臨床心理士の役割が多くなるでしょうし、それに応えていくことができれば、臨床心理士の地位も向上するでしょう。 |